神経障害は、毛細血管から栄養をもらっている神経細胞が、毛細血管がダメージを受けることで、障害されることが病因です。
一般的にはHbA1c 7%以上の高血糖が長期間持続すると生じてくると言われています。
糖尿病予備群程度の高血糖や血糖変動、さらには低血糖でも神経を障害させるということが明らかになってきています。
神経が障害されると様々な症状が起こります。
特に糖尿病性神経障害では、足の違和感を訴えられることが多いです。典型的には、両足先に左右対称に生じる痺れ感・痛み・冷感や、足底に薄皮が張り付いているような違和感と表現されます。
これらは、感覚神経の障害によって起こります。
さらに悪化してくると、痛みに対する感覚が低下してきます。これは神経細胞が死滅してきていることを意味します。
ケガや炎症が生じていても全く気が付くことが出来ずに、気がつけば足が壊疽していて、切断に至るようなケースもあります。
胃腸運動の異常にも注意が必要です。
胃や腸の動きは、自律神経によって精巧に管理されています。
その自律神経が障害されることで、便秘や下痢を繰り返すなどの便通異常や、胸やけ、消化不良などの胃症状が起こります。
これら以外にも、起立性低血圧(たちくらみ)、排尿障害、勃起障害、発汗障害(無汗症)、足の変形、眼球運動障害、顔面麻痺など、様々な症状が起こり得ます。
これらの症状により、生活の質(QOL:quality of life)を大きく損なうことがあります。
さらには、心臓神経の障害による致死的な不整脈により突然死の原因にもなり、生命予後にも大きな影響を及ぼしかねません。
神経障害の原因は、神経を栄養している血管が高血糖により障害されることですから、高血糖を是正することが最大の対策になります。
一般的にはHbA1c 7%以上の高血糖が長期間持続すると生じてくると、前述しました。しかし、実は糖尿病予備群程度の高血糖や血糖変動、さらには低血糖でも神経を障害させるということが明らかになってきています。
実際に、境界型糖尿病患者において、神経障害を呈している方が一定数いらっしゃることも報告されています。
以上より、糖尿病性神経障害への対策としては、血糖を出来るだけ早期からしっかりとマネージメントすることに尽きます。
勿論、神経障害を起こし得るその他の疾患である高血圧、脂質異常、肥満、喫煙などのコントコールも重要です。
長期間高血糖状態であった方が、悩んでいる神経障害を改善させるために一生懸命血糖コントロールに励んだ場合に、むしろ痛みが悪化する場合があります。
せっかく血糖値は下がったのに、むしろ日常生活に大きな支障がでるほどの激痛が出現することもあります。これを、「治療後有痛性神経障害」と言います。
何故、このような痛みが出現するのはわかっていませんが、長期間高血糖状態にあった方が血糖コントロールを行う際には、焦りすぎないことも大切です。
特に血糖コントロール開始時に、痩せ型の方、神経障害がある方は注意が必要だと言われています。