日本では、約1000万人が糖尿病であると推定されています。
さらには約1000万人が糖尿病予備軍であると言われており、合わせると2000万人にもなります。
成人の10~11人に1人は糖尿病であり、4人に1人は予備軍ということになります。
誰もが他人事とは言えなくなっています。
それでは、糖尿病といえば、何を連想しますか?
間食をやめられない、ついつい食べ過ぎる、運動をしない、などのだらしない生活習慣が原因の病気ね、なんて思っている人も多いのではないでしょうか。
糖尿病を知るためには「血糖」を知る必要があります。私たちの体を維持し動かしていくためには多くのエネルギーを必要とします。糖尿病で問題となる「血糖」とは、血液中のブドウ糖のことであり、このブドウ糖が体内で非常に重要なエネルギー源なのです。糖尿病は、この「血糖」が多くなってしまっている状態のことを言います。
通常は、食事によって体内に入ってきた栄養がブドウ糖として血液中に入ってくると、膵臓からインスリンというホルモンが出てきて、ブドウ糖はすみやかに体内に蓄えられていきます。
肥満や運動不足は、このインスリンのブドウ糖を体内に蓄える力を弱めてしまいます。だから血液中のブドウ糖が多くなり糖尿病になる、わけではありません。
ここで重要な要素が、膵臓からインスリンを出す力です。
どんなに太っても、全く運動をしなくても、インスリンを出す力が強い人は糖尿病にはなりません。
体質としてインスリンを出す力が弱い人が、血液のブドウ糖を体内蓄えられなくなり、糖尿病になるのです。
例えば、免疫の異常などでインスリンというホルモンが出なくなる1型糖尿病は、生活習慣と全く関係ありません。
インスリンをうまく補充すれば、何かを制限されることはありません。
いわゆる生活習慣病である2型糖尿病が糖尿病の大多数を占めるわけですが、この2型糖尿病も、インスリンを出す力が弱いという体質の要素が強いということはあまり認識されていません。
食生活が急激に欧米化し、交通網の発達の恩恵に預かり運動しなくなった私たち日本人の平均的な暮らしをしている人々のうち、インスリンを出す力が弱いという体質を持っている人が糖尿病になっているのです。残念ながら、私たちアジア人は欧米人と比べて、インスリンを出す力が弱いことが明らかになっています。
だから欧米人と同じような生活習慣になったこの50年で劇的に糖尿病人口が増えているのです。
さて糖尿病は何故問題なのでしょうか。実は、糖尿病の人は、糖尿病でない人と比べて、平均寿命が約10年短くなると言われています。これは、血管がダメージを受けることで、様々な病気になりやすいからです。
残念ながら、体質を変化させるような治療薬は、まだ存在しません。だから、食事に気を使ったり、積極的に身体を動かしたりする必要があるのです。「雨だれが石を穿つ」ように、ほんの少しの意識で将来は変えられます。
身体に良いと思って、あるいは言い聞かせて、みかんを1日に5個、6個と食べていませんか。
果物には、ビタミンが豊富に含まれているなど、良い栄養素もたくさん含まれていますが、果糖と呼ばれる糖分が多量に含まれています。青汁や野菜ジュースも、甘くて飲みやすいものは要注意です。砂糖で味を調えています。
炭水化物の量をコントロールすることで、効率よく体重を減らすことが出来ることもわかってきています。
お米の量を1~2口分減らすだけでも変化は起こります。
食事内容が変えられない場合は、食事の順番を変えてみてはどうでしょうか。野菜やおかずを先に食べて、お米やパンなどの主食を後回しにするだけでも、血糖を下げることができることも明らかになってきています。
糖尿病の外来をしていると糖尿病であることが周囲にわかると恥ずかしいという声をよく耳にします。
糖尿病に対する偏見が無くなれば、もっと多くの人が血糖に興味を持って健康に過ごしてもらえるのではないかと思います。